――家業は新しい酒蔵のかたちへ

青木酒造7代目蔵元 青木滋延

青木酒造7代目蔵元。ちょうど60歳を過ぎた頃、職人の高齢化や設備の老朽化といった問題を抱えていました。そして、自分ももうそんなに若くない。蔵の将来を考えて、さまざまな変革をすべきときにきていると感じていました。

まず、新たな杜氏を迎え入れました。杜氏にもそれぞれ個性があり、合う・合わないがあります。数人の候補がいましたが、現杜氏の箭内に他にはない可能性を感じました。蒸しの段階では、私を始め娘や女房、出荷作業の社員も関わり全員で作業します。ほかに若い杜氏や見習いも加わります。最近では職人杜氏を雇う酒蔵は少なくなっていますが、昔は酒造りの各過程に専門家が存在しました。それだけ、酒造りは奥深く大変な作業だったということでもあるわけです。より良い酒を造りたいと願う杜氏の夢と、同じく余地良い酒を世に出したいと願う蔵元の想いは、一連托生です。

元々、青木酒造は茨城の米で良い酒を創りたいと考え、ほとんどの米が茨城県産でしたが、品種も「茨城オリジナルの米」を積極的に使用しています。さらに、設備も一新しました。新しい杜氏を迎えて良い酒を造っても、安定した品質で一年間を通してお酒を出荷することが大事だと考えました。

そして、重要な後継者の問題。長男はまだ高校生でしたので、長女にお願いしたい気持ちはありました。しかし、自ら望んで看護師となった彼女に、なかなか言い出せずにいました。すると、そんなわたしの心中を察した女房が、長女に話を持ちかけてくれていました。もちろん申し訳ない気持ちもありましたが、娘が日本酒のことを学び、PRに励んでくれるおかげで、注目されることも増えました。また、それに伴い女房も日本酒のことを学んでくれるようになりました。

桃まつりで甘酒を販売する長男

そんななか「御慶事 純米吟醸 ひたち錦」が、2015年に SAKE COMPETITION 2015 純米吟醸部門 の3位を受賞し、 2016年には IWC (インターナショナルワインチャレンジ) SAKE部門 純米吟醸カテゴリーで最高位となるトロフィー賞を受賞、さらに、U.S. National Sake Appraisal (全米日本酒歓評会)の吟醸部門で、こちらも最高位となるグランプリ受賞。どれも初出品での受賞でしたので、周りにとても驚かれました。注目度も一層増し、問い合わせや注文も多くなり、メディアの取材も多くなりました。それにしっかり対応し、宙に浮かずに歩んで来れているのも、家族のおかげ。そして、蔵を支える職人や従業員のおかげです。もう60年以上働いてくれている従業員もいるんです。「御慶事」の字は父(6代目蔵元)の字がそのままラベルになっているし、熨斗の字は長らく母(6代目蔵元夫人)が筆を取っていました。

1831年に創業し、もうすぐ190年が経とうとしています。地元の伝統産業を守り、次世代へ継承していく――家族と職人の手で紡がれてきた青木酒造は、1年1年、より良い茨城の地酒を目指して「創り」続けています。

青木酒造株式会社 代表取締役 青木滋延